天然繊維複合材料の問題とその解決

updated; 07/11/2006

欧州の多くの自動車モデルが,今インテリア及び構造部品用に熱可塑性樹脂並びに天然繊維を使っている。例えば,くるま1台当り,天然繊維を5-10kgも使う車種がある。 2000年,欧州自動車産業は,28,300dの天然繊維を消費した。天然繊維の種類は,20,000dが亜麻,3,700dが黄麻である。

○ 地理的な入手の容易性

天然繊維使用における最初の問題は,その供給問題である。長距離輸送をしなければならないのでは,低コスト化は,簡単に相殺されてしまう。
亜麻は,北欧の湿度の高い地域で多く栽培されるのに対し,黄麻,サイザル麻又はケナフは,より乾燥した地域に分布する。麻は,欧州及び中国を含む,カナダから南アフリカまでのいずれの地域でも容易に栽培されるので,他の植物よりも有利である。各生産地域における繊維価格はほぼ同等である。

○ 供給の持続性

自然植物産品の未来は,常に供給安定性の問題になる。更に生産者が需要に見合う供給能力を持てるか,特に市場が伸びようとしているときに問題が生じる。しかし,これは天然繊維にとって大きな問題ではない。検討される全ての植物にとって,市場をフォローアップするに足る栽培面積がある。成長市場をキープするためには,耕地面積を増やすだけでなく,繊維植物を加工処理する設備を建設することにある。この設備のコストは安くない。

○ 天然繊維の複雑な性質

同一品種でさえ,天然繊維の組成は同じでない - 一つの種類から他の種類への違いだけでなく,どこでまたいかにその植物が栽培されたかによっても繊維の性質は,変化する。
天然繊維強化複合材料を生産する場合の最初の制約は,植物の性質に関わるパラメータをコントロールし,最終複合材料の特性をコントロールする能力である。

Tab.2 天然繊維の引張り特性
naturedensity(g/cm3)stg(GPa)elg(%)modulus(GPa)
E-glass2.541.4-2.6275
Wood1.540.14-1.5-20-40
Flax1.4-1.50.3-0.961.5-4.027-80
Hemp1.4-1.50.5-1.041.0-6.032-70
Jute1.4-1.50.4-0.80.8-2.013-26.5
Viscose1.50.31-11
Source; FINC: WEIGEL IAP Potsdam - GEIGER ICT Pfinztal - BUSCH IWM Halle
○ 天然繊維とポリマー

天然繊維の主要な成分は,セルロースである。これは,大多数のポリマーと相性が悪い。この事実は,伝統的な麻/PPコンパウンドで証明されている。
いま天然繊維供給メーカは,母繊維の表面の繊維化過程において,いかにポリマーマトリックスと親和性を保つかの技術開発にしのぎを削っている。
このプロセス開発によって,今やガラス繊維のそれに近い機械的性能の天然繊維複合材料を得ることが可能となった。

○ その他の困難

天然繊維は,不活性材料ではない。ある特定の環境条件下で反応する。

  1. 湿度; 天然繊維は,吸水し,繊維の劣化が生じる。 ある研究において,30%麻強化部品を水に浸漬したところ,質量の7%の水分を吸収した。他方,標準湿熱条件下で,飽和後の部品が,吸収した水分を全て排出し,吸水/脱水におけるヒステリシスは観察されなかった。
    水分が解放されれば,オリジナルな特性は回復するものの,水分を吸収している間,特性は僅かに減少する。
  2. 温度;天然繊維のコンポーネントの性質から,繊維の特性劣化を伴わずに,220-230℃以上の高温に暴露することはできない。それ故,天然繊維を含む複合材料は,230℃以上の温度で加工処理できない。
  3. 臭気;プラスチック加工メーカの中には,複合材料加工及び加工後,天然繊維から生じる強い臭気を嫌う人がいる。この現象は,温度の極端な上昇の結果である。極端な加熱は,ペクチン及び他の弱い繊維組成部の炭化を生じる。型の目詰まりを起こすことにもなるこの現象を回避するため,推奨加工条件を観察することが必要である。臭気を排除する添加剤も開発されている。

Recompiled from JEC Composites, May-June 2006, No.25, 'Natural fiber composites - problems and solutions'(p32)

天然繊維強化複合材の躍進

updated; 05/06/2006

最近の天然繊維材料は,木,ケナフ,麻,亜麻,黄麻及びサイザル麻とその種類を拡大し,また次第にその制約がなくなりつつある。鶏又は七面鳥の羽毛さえ複合材の補強材として適用が試みられた。2005年Composite Products Incorporated (CPI),ミネソタ,米国は,トウモロコシで船体を建造する実験を行なった。
CPI社は,長繊維強化熱可塑性樹脂ダイレクトインラインコンパウンディング又はD-LFT成形法(Advantage成形法という)で成形する。CPI社の特許となっている,Advantage成形法は,長さ25.4mmの繊維が熱可塑性樹脂と混合されて溶融プリフォームを作る。プリフォームは,型又はトランスファーマシンのシリンダーに直に置かれ,最大繊維長を保ったまま構造用複合材を成形する。

○コストダウン
Tab. 1 天然繊維複合材料の特性
propertyabcdef
tensile stg. kPa33.835.028.236.446.132.7
tensile mod. MPa1.44.03.33.54.84.6
flexural stg. kPa40.763.049.761.878.158.9
flexural mod. MPa1.44.32.33.23.43.8
Izod imp.J/m21.331.940.588.9112.9184.7
codeproduct description
aunfilled PP
b40% talc/polypropylene
c40% wood flour/polypropylene
dCPI - 40% flax sive/polypropylene
eCPI - 30% flax sive - 10% glass(13mm)/polypropylene
fCPI - 40% kenaf fiber/polypropylene

天然繊維は,内国における調達が容易である他,多くの合成繊維と比較して価格が低廉なため,複合材料最終製品のトータルコストを削減することに寄与する。最近の原油価格の高騰による樹脂のコストアップに伴い,特に構造的な強度への要求が余り厳しくない用途においては,天然繊維は,材料コストを削減するよい手段となる。即ち,天然繊維が材料コストを削減するための充填材又は補強材として利用されているのである。

天然繊維と合成繊維を混合して使用すれば,より材料コストを下げかつ物性を改善することができる。CPI社は,30%亜麻,10%ガラス繊維強化コンパウンドによる複合材を開発した。この複合材は,40%炭酸カルシウム充填ポリプロピレン複合材を超える特性を達成した(Tab.1参照)。

○成形温度及び供給問題

一般に天然繊維成形に伴う問題点の一つは,天然繊維の温度敏感性である。天然繊維は溶融時高温に暴露されたとき,燃焼するか又は色が褐色に変化し,樹脂材料の溶融局面ではバラバラに破断する傾向がある。その結果,天然繊維は,黒く変色し「焦げた砂糖」のような臭気を発する。この問題の解決には特殊な技術が必要である。Advantage法もその解決の一つである。
もう1つの問題は,供給の問題である。天然繊維は,豊富に収穫でき,容易に再生が可能な一方,生産要求に見合う安定供給が不確かな側面がある。多くの欧州諸国が最終製品に対するリサイクル要求を満たす努力を加速しているため,欧州は天然繊維の供給インフラの開発において北米より先を行っている可能性がある。
今後天然繊維の開発と実用は継続的に進展するのであるから,供給体制も同様に確立して行かなければならない。中断されることのない供給を担保するため天然繊維を使用する成形業者は,繊維の供給者と良好な関係を発展させる必要がある。

○用途の拡大

天然繊維のメリットを享受する用途の数と範囲は増大しつつある。自動車向け用途は多数あって,ドアライナー,トランクライナー,パッケージトレー,スピーカ棚,アンダーボディパネル及び音響並びに弱音用途も入る。この他農業用途,家具,レクリエーション車の運搬トラック,建設資材(床デッキ,フェンスなど)がある。またまだ数は少ないものの成形品又は押出成形品もある。
更に多くの企業,産業及び政府もリサイクルの方向へ動いて行いるから,今後は環境保護が材料選択においてより大きな役割を演ずるようになるだろう。 天然繊維は環境保護視点から優秀であるばかりか,材料コストの削減によって更なるメリットを提供しようとしている。

Recompiled from JEC Composites, December 2005, No.21, 'Natural fiber makes a name for themselves'(p32)

天然繊維強化熱可塑性樹脂

updated; 04/24/2005

強化熱可塑性樹脂複合材料は,熱可塑性樹脂母材を無機,有機又は天然繊維によって方向性又はランダムに補強することによって得られる材料である。

強化繊維

2003年現在,熱可塑性樹脂をマトリクスとする強化繊維はグローバルに見て800千d規模で,うちEガラス繊維がこの市場の75%-80%を占める。次いで天然繊維が15-17%,炭素繊維が3%程度である。炭素繊維は,その導電特性を活かした特定用途を持ち,S-ガラス,R-ガラス,アラミド繊維,高密度ポリエチレン繊維はニッチな市場を確保している。
最近,環境的な見地から欧州及び米国において,麻又は亜麻などの天然繊維が自動車部門で注目され,一部内装材適用で成功しつつある。

例えば亜麻天然繊維が車のインテリアパネルに採用された。麻繊維もまたプラスチックに剛性を与え又は自然の絶縁材として使われる。フランスの企業2社が,自動車及び建築用途向けに天然繊維を加工している。
例えば,Techi-Lin社は,Yvetot,Normandyの近くで自動車用インテリアドアパネル用に亜麻繊維を加工し,他方 Effireal社は,Chemille,Maine-et-Loireで麻の繊維からウールを生産する。

供給については,北フランスで亜麻がヤーン及び織物生産用に広く耕作されている。しかし亜麻繊維は品質が同じという訳ではないので,生産者はより低品質の繊維でも利用できる市場を開発している。
Techni-Lin社は,自動車メーカと協議の結果,地元の協同組合によって1995年に設置された組合の子会社である。Techni-Lin社の材料は,50%ポリプロピレン繊維及び50%亜麻繊維の複合材料である。この複合比率は,60%-40%,又は70%-30%でもよい。

Techni-Lin社はこの天然繊維を漂白又は着色してPP 繊維と混合し,均質化し,マットにする。マットの厚さは数mmで,150-3,000g/m2の質量である。マットは裁断され,通常この形で自動車の内装メーカに送られ,最終製品に加熱プレス加工される。1996年から製品需要が次第に増加し,2000年7月に同社は,ライン及び加熱プレス機を増設した。
現在,同社は,Opel Corsa及びCitroen C5用インテリアドアパネルを,同じくRenault Twingo用リア荷物棚を天然繊維複合材料で供給している。2002年,Techni-Lin社は,亜麻繊維を800d処理し,1日2000台の車のインテリアドアパネルを供給した。 他の産業も同材料の可能性を調査中である。

一方米国では,Elkhart, IN, FlexForm Technologies LLC社の製造する天然繊維強化熱可塑性樹脂部品が,北米産の3モデル以上の自動車部品向けに採用を指定された。即ち,Ford Freestyle SELのシートバック, Grand Cherokeeの上部ドアーインナーパネル及びMercedes M Class SUVのドアーインナーパネルの3つである。FlexForm社は今年中に150万台の北米車でこの材料が使用されると言う。




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